「細かい、うるさい、任せてくれない」の本当の理由──マネジメントが壊れる期待ギャップの正体と処方箋
- Centerboard 石原正博
- 6月11日
- 読了時間: 4分

「なんで上は、あんなに細かいんだ……」
いちいち口を出してくる
任せてくれない
何かやるたびに指示やダメ出しが飛んでくる
そんな“うるさい上司”に悩まされたことはありませんか。
正直、めんどくさいし、やる気もなくなるという声も少なくありません。
しかし、その「うるささ」には理由があります。
実はこれは、組織に共通して起きる構造的な問題なのです。
ーーなぜ上司は細かく言いたがるのか
多くの上司は、決して嫌がらせで細かく言っているわけではありません。
では、なぜつい口出ししたり、任せずに指示を増やしたりしてしまうのか。
その理由は、たった一つです。
「期待通りに動いてくれないから」
上司は「こうしてくれるはず」と思っている
部下は「何を求められているか分からない」と感じている
つまり、これは「期待のギャップ」が原因なのです。
ーー期待のギャップがマネジメントを壊す
このギャップは、どの組織にも、どの階層にも起こります。
経営と役員
役員と部長
部長と課長
課長と現場リーダー
上の立場の人は「言わなくてもわかってほしい」と思う
下の立場の人は「何も言われてないのに、なんで怒られるの」と感じる
このすれ違いこそが、マネジメントがうまくいかない最大の原因です。
ーー本質は「伝わっていない」ではなく「伝えていない」
上司は「新入社員じゃないんだから、自分で判断してくれよ」と思っている
部下は「どこまで裁量があるのか分からない」と迷っている
つまり、問題の本質は、「伝わっていない」のではなく、「伝えていない」ということです。
ーーギャップをなくすにはどうするか
こうしたギャップを埋めるには、個人の努力だけでは限界があります。
必要なのは、組織としての仕組み化です。
その一つが、「カスケードダウン」です。
ーーカスケードダウンとは何か
カスケードダウンとは、経営や上層部の意図、戦略、期待を、現場の目標や行動に翻訳して
つなぐプロセスです。
たとえば、以下のような形で機能します。
上司の期待(上位レイヤー) と 部下の行動(下位レイヤー)を対応させると
・もっとスピード感を持って意思決定してほしい
→ 自分で判断できる範囲を明文化して実行する
・利益率を高めたい
→ 商品・顧客別の採算管理を導入して改善を試みる
・新規顧客を開拓してほしい
→ ターゲット顧客像を明文化し、打ち手を提案する
ーー部下にできること
では、上司がうまく伝えてくれない場合、私たちはどうすればいいのでしょうか。
答えは、「期待されていることを、自分から聞きにいくこと」です。
どういう成果を期待していますか
こう考えて動こうと思っているのですが、合っていますか
このようにすり合わせる力が、あなたのキャリアを大きく変えます。
ちなみに米国企業では、カスケードダウンの仕組みが一般的に浸透しており、
上司は明確な指示だけでなく、その目的や意図まで伝えることが求められます。
そして、もし目的や意図が分からなければ、部下が上司に聞き返すのはごく
当たり前の文化となっているのです。
ーー結論
もしあなたの上司が細かくて、うるさいと感じたら
なぜこの人はこんなに口を出してくるのかを、一度冷静に考えてみてください。
それはもしかすると、あなたに対する期待があるからかもしれません。
その期待を言語化し、共有し、確認し合うことができれば
無駄な指示は減り
余計なストレスもなくなり
自律的に動ける組織が生まれます。
ーー最後に
うまくいく組織には、上司の意図と部下の行動をつなぐ翻訳者が必ずいます。
それを仕組みとして実現するのが、戦略のカスケードダウンです。
自分のキャリアにも、組織の未来にも、大きな違いを生む考え方です。
もし今の職場に、うるさい上司や指示待ち部下があふれていたら
それはあなたが翻訳者になるチャンスかもしれません。
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