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Centerboard 石原正博

「人材の多様性推進」への違和感


ここ数年、「人材の多様性が大事である」ということをしばしば聞くようになりました。


混迷する経済環境の中、多くの企業が突破口を見いだせず、その一つの要因として人材の同質化が挙げられています。新たな発想や価値観を取り込むために、国籍、性別、年齢などに関わらず新風を巻き起こす人材を積極的に採用しようとする動きが見られます。そして、企業はダイバーシティ推進室を設置し、施策を進めようとしています。


ここまでは良いのですが、各企業の取組みを見ると、「人材の多様化」自体が目的化しているのではないかという違和感を覚えます。女性社員の管理職登用や外国人社員の採用、研修で「お互いの違いを受け入れましょう」といった啓蒙を行っていますが、結局のところ、企業として何を目指しているのかが明確ではありません。人事部や現場の管理職も、「多様性の推進」という方針に対して、「何となく言っていることも分かる」程度の理解で施策を進めているのではないでしょうか。


企業経営にとって人材の多様性は重要です。しかし、何のための「多様性」なのか、その目的が明確でなければ、どんな人材を育て、採用するかの判断がつかなくなります。この判断基準となるのが、経営戦略です。経営戦略に基づいて、どのような人材が必要なのか、どのような違いを取り入れるべきなのかを判断すべきです。


「経営戦略に基づいて」という基準がそもそも人材の同質化を招くのではないかという意見もあるかもしれませんが、それでは企業として「何でもかんでも多様性を取り入れること」ができるのかという問題に直面します。現実的には不可能であり、どこまでの多様性を受け入れるのかを決める判断基準が必要です。


もう一つの違和感は、「今いる社員たちは本当に同質なのか?」という点です。現場の方々と話をする機会が多くありますが、現場には面白い発想を持った人や多趣味な人、変わり者も少なくありません。問題は、そういった人材の個性を引き出さず、活用していないマネジメントにあります。現実的には多様性があるにも関わらず、同質化させてしまっている原因はマネジメントにあるのです。


コンサルティングの現場では、数名が集まってフリートークを行うことがあります。マネジャーは普段から部下と話をしているつもりでも、改まって自由な議論をすると部下たちが意外な発想や考え方を持っていることに驚かされることがあります。


経営者の皆さんは、自社にとって多様性の範囲を決める判断基準とは何か、また社員たちは本当に「多様性」がないのか、改めて考えてみてはどうでしょうか。



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